地中熱利用住宅って?

  B【地中蓄熱層】

 地中熱をうまく導入して建物基底部のコンクリート盤にうまく蓄熱するためにはもうひとつの要素が必要です。

 それはこのコンクリート蓄熱板に到達した熱を逃がさないということです。


 床下の基礎スラブ、あるいは土間コンクリートを蓄熱板としてその熱を建物のなかにじんわりと放熱させるということ

が地中熱利用の目的ではありますが、地中熱というのはそれほど無尽蔵にくみ出せる熱ではありません。


 土の状態、つまり乾燥した土と湿潤な土では熱容量は3倍も違うといわれていますし、地下水流の影響などもありま

す。 (例: 土壌熱抵抗係数 湿地0.5前後 乾燥地1.2〜1.5K・m/W K=ケルビン) 土質や密度にもよるでしょう。 

 通常の日射量がどのくらいかなど条件によっても違うのですが、その場所での地中熱容量によって単位時間当たり

に取り出せる熱量も決まってきます。


 いずれ、せっかく取得した地中熱で暖めた蓄熱板を、すぐに冷やしてしまうようではまずいのです。


 この対策は簡単で、蓄熱板の上を高気密・高断熱に造った建物で覆ってやればいいのです。 熱は水と同じように高

いところから低いところへ流れます。 建物内が蓄熱板と同じ温度になった段階で、蓄熱板は放熱をやめ、それ以上熱

を失うことがありません。 厳重な建物の断熱性能がこの地中熱利用の鍵を握るということもいえるのです。


 以前はこの高断熱の住宅を作ることがなかなかできませんでした。 一般的に本当に高断熱の住宅をつくることがで

きるようになったのは、たかだかここ10年ほどにすぎません。 


 それ以前の住宅では、たとえば建物の隙間の面積を測定しても「隙間が多すぎて測定器で測定不能!」という結果し

かでないほど隙間だらけだったのですが、現在では例えば床面積40坪の家の場合、天井・壁・床下などにあるすべて

の隙間をかき集めても1軒で数センチ四方くらいの隙間しかないという測定結果が出てきます。


 もっとも、今でも昔ながらの工法で建てている業者は、昔ながらの「隙間面積は測定不能」という住宅を今でも建て続

けていますが、そういう会社はローコスト住宅の販売に走ったりしていますのでこのホームページを興味深くご覧にな

っている方などとはあまり接点はないのかもしれません。

 また、そうでない高気密・高断熱住宅を売りにしている業者であっても意外とちゃんとした高断熱住宅の施工ができる

ところは思ったほど多くないのも事実です。

 断熱の基本的な理解や経験が不足していることもありますし、丁寧に気密・断熱するというのは手間もお金もかかる

ことだからです。


 幸い、私たちは何年も前から高気密・高断熱工法を手がけてきていましたので、上棟後におこなう気密測定で相当隙

間面積C値は当然1.0以下の気密性能を全棟達成していますし、次世代省エネルギー基準をすべてクリアーというの

も当たり前です。 外断熱工法の建物もいくつも経験済みですからこの点ではあまり心配しておりません。


 ただし実際には、どんなに高気密・高断熱した建物であっても若干は熱が外部に漏れ出してしまいます。人の出入り

もありますし窓の開け閉めもあります。 壁、ガラス窓、天井からもわずかながら損失は発生します。


 この損失分を何らかの熱源でおぎなってやりさえすれば、蓄熱層の熱を効率よく利用できることになります。


 次に蓄熱層の下の部分を見てみましょう。


 建物の中の温度が地中や蓄熱層とおなじ程度の温度の場合は熱の移動はおこりません。 ところが前項でも書きま

したが盛岡での地中温度は13度前後しかありませんので必然的に補助暖房を使って20度なり、それ以上の気温にな

るまで部屋の中を暖めます。 そうすると、今度は室内と地中との間に温度の逆転がおこります。 室内の暖房で暖め

られた蓄熱板から温度の低い地下へと熱が逃げていくことになるのではないか?という疑問が当然でてきますよね。


 今までの住宅ではこの疑問点を解消するために蓄熱層下に断熱材を敷きこむということをしてきたのです。 床下の

コンクリートや砂利層を蓄熱層とするオール電化住宅や床暖房住宅では、特にこの地下との断熱を重視した工法を続

けてきました。 もちろん地中熱という概念がなかったためなのですが・・・・。



 ところで話は飛びますが、縄文の時代から竪穴式住居のような土間と直結した建物というものは存在しました。 また

同様の建物は世界中に見られます。


地面の熱を居住空間に対して有効に利用していたことは誰しも知っていたわけです。


 これを現代の地熱利用住宅にあてはめたらどうでしょうか? つまり土自体がもつ断熱性と蓄熱性によって、家の中

の補助的暖房の熱を床下のコンクリート盤だけではなくその下の土中にも蓄える、と考えるわけです。もちろん、この理

屈にはいくつかのハードルが存在しますが、コンクリート蓄熱層から地下へ熱が無限に逃げていくと考えるのではなく、

地下へも熱を蓄えると考えれば、もともとレンガとほぼおなじ蓄熱性能のある地中の土を含めた、大蓄熱層ができあが

ると考えれば、寒冷地であっても地中熱を底上げして利用することができるではありませんか。


 ただし、普通につくったのでは蓄熱するどころかどんどん熱が逃げてゆくことになるわけですが、もちろん、この地下

の蓄熱層から熱が地表へ逃げることは、建物周囲の断熱板がさえぎってくれます。 この断熱板は地中熱を建物底部

のコンクリート蓄熱盤に効率よく導くとともに、建物の中の熱を地中を経由して外気へ逃がすことを防ぐという2つの役割

を果たすことになるわけです。


直下の地中方向に対しては、土自体が持つ断熱性がある程度のところで平衡状態をつくりますので垂れ流し的に熱が

逃げてゆくことはさけれらそうです。

1mの厚さの土は10センチの厚さの断熱材に近い断熱性能を持つのですから。



***【熱バランス設備】へつづく***