地中熱利用住宅って?
【外断熱と屋内通気】
前々項では「建物をうまく断熱したうえで、地中から取り入れた熱とバランスが取れるように建物内を補助的に加熱
する」ということを書きました。
ところが、一般の在来工法でこれを行おうとすると色々不都合なことが出てくるのです。 その中のひとつをあげて
みましょう。
実際に地中温度と地上に断熱された空間の温度を測定してみると、建物基底部のコンクリート蓄熱層の温度がか
なり低いのです。 これは地中熱を受け取ったコンクリート層が上部空間に向かって放熱することにより温度が下が
るためですが、屋内空間を加熱すると温度差のためにこの部分で結露するのです。
これは考えてみれば当たり前の話で、地中の熱をパッシブに利用している証明のようなものですし、事実、基礎断
熱している住宅の床下湿度はどこでも高くなっているということが最近わかってきました。
もちろん、コンクリート層の中には温水回路を埋め込んでありますのでそれを動作させて温度を上げてやれば結露
を防げるのですが、常にそれをやったのでは燃費がかかってしまい何のための地中熱利用かということになります。
別な方法を考えましょう。
結露は風がある場所には発生しません。常に床下空間の空気を動かして湿気がこもらないようにするのです。 こ
れを実現するためにダクトパイプとファンにより建物上部の天井裏の暖かい空気を床下に吹き降ろすシステムを採
用するわけですが、床下に空気を吹き込むには床下の空気を排出してやる必要があるのです。 それも空気がよど
むところをつくらないように満遍なく、そして吹き降ろすダクトの給気元である天井裏へスムースに戻るようにです。
空気が屋内を縦に循環することにより温度差をなくし結露を解消させるために、この屋内通気が重要になってくるの
です。 もちろんこの屋内空気自体も空調により除湿されなくてはなりません。 弊社が小さなエアコン1台でかまわ
ないから必ず設置してください、と言っているのはそうした意味もあります。
24時間換気システムについても顕熱換気か全熱換気かの違いは大きなものとなりますからそれも考慮しなくては
なりません。(空気中の水蒸気を含めて換気するかどうかという判断です。)
さらに循環する空気が外気によって冷やされることがないように完全に断熱する必要もあります。柱・梁など木部構
造材もできれば断熱することが望ましいのです。
2次的な効果としてこれら構造材自体も少ないですが蓄熱作用をもちますので屋内温度を一定に保つ効果があり
ます。 したがって、この工法においては外断熱を推奨したいと思います。 (またさらに現在弊社ではその高断熱仕
様として進化型の外張り断熱・内壁充填断熱の複合断熱工法もおこなっています。)
スーパーウォールやFPなどの内充填断熱パネルでも次世代省エネルギー基準を満たすことは可能ですが、タイ
ル張り等の外壁に重量のあるものを使う時以外はやはり外断熱のほうが適していると私たちは考えます。
外断熱の工法については色々な方法がありますが、各社独自のノウハウがあるようです。逆にノウハウをものにし
ていない形ばかりの外断熱を売りにしているハウスメーカーや工務店では、かなりの確率でトラブルが発生している
ようでもあります。
そしてこの外断熱と屋内通気のための技術的なノウハウは多岐に渡るためホームページでは完全に説明すること
ができません。
一例を挙げてみますが、例えば床下から室内へ空気を循環させるために多くの会社では床にガラリやスリットなど
を設けています。 しかし、これは自然対流の効果をねらったものですので高気密高断熱住宅になるほど自然対流
自体が発生しなくなります。
また、床下へ空気が入っていかなければ出てもこないわけですから単に床にガラリなどの穴を開けただけでは効
果が十分に発揮されないのは明らかです。
実際これは測定してみてもそのような結果が出てくるわけですが、ほとんどの施工会社ではそこら辺が理解されて
いないように思われてなりません。
ノウハウというのはそうしたものを積み上げたものですのでそれだけで分厚い解説本が1冊できてしまいます。
また、最近では大手ホームメーカーもこうした地中熱に着目して似たような工法を行っているところがありますが、
メンテ性の非常に悪い逆スラブ形式の基礎だったり、電気ヒーターを直接埋め込む形式を採用したり、トラブルの多
い直接床暖房形式のものだったり、と10年後20年後を無視した問題のあるものばかりのようです。 特許侵害を避
けるためなのか、施工コストを下げるためなのか、理由は定かではありませんがなぜそういう選択に至ったのか非常
に理解に苦しみます。
地中熱に限らず、太陽光発電や風力発電など、住宅に自然のエネルギーを利用する方法はさまざまありますが、
多くはその工事や設備には多大なお金がかかり、また機械に頼った方法のものばかりです。
ここで私たちが提案する地中熱利用住宅は、自然と共生するエコロジー住宅と名打っていながらなぜそんなに機
械にばかり頼った方法しかとれないのか?という私達の素朴な疑問から生まれました。 普通に働いている人間に
とって金額的にも実行可能な範囲で、なおかつできるだけ複雑な機械に頼らないシンプルな方法で太陽と大地の恵
みを利用する方法のひとつがこの地中熱利用です。
パッシブな方法での太陽熱利用のひとつの方法、と考えていただいても結構ですし、一歩進んだ断熱工法の話、と
とらえていただいてもかまいません。
むしろ室内空間の環境をいかに安定させるかという研究をしているに過ぎないともいえます。
「地中熱」という言葉が今は独り歩きしている状況がありますが、基本的なことはいくつかの項目しかありません。
自分で書いていてこういうのもなんですが地中熱という言葉に惑わされてはいけません。 基本をしっかり理解して
それを守る、ということ以外快適な住宅をつくる方法はありません。 目新しい工法や目新しい機械をアッピールする
としたらそれは商売上の方便であることは間違いありません。
しかし、その「基本」ということをちゃんと理解している業者(設計者も含め)は、実はほんの一握りしか存在せず、ま
た設計するにも施工するにも一番難しいことでもあるということなんですね。
一口にエコというと、環境にとってやさしいのか、財布の中身にやさしいのか、ごっちゃになってしまっている話も多
いのですが、とりあえずは・・・
「誰でもできるところから始めよう!」・・・そのうえで・・・
「その時代その時代の要求にあわせてより良い方法を選ぼう!」・・・
というのが私たちの提案でもあります。
ここまでご覧いただきましてありがとうございました。 地中熱利用の方法と断熱工法に関しての概略説明は終わり
です。 なんども繰り返して申し訳ありませんが、このほかにも細かいノウハウや考え方がありすべてをここで解説す
るのはとても難しいです。
また、現在でも実際に実験と試行錯誤を重ねながら改良を続けていますので、ノウハウを蓄積し続けているところ
です。
寒冷地ではさらに地中の温度自体が低い、という問題もあり一筋縄ではいかないこともわかってきました。その対
策も実は改良版ということで研究を進めているのでおいおいお知らせしたいと思います。
県内の方でさらに資料をご覧になりたい方はメインページのお問い合せフォームから「地中熱利用住宅資料希望」
とご請求ください
また、ご希望の方には説明もいたしますのでご連絡ください。
(ただし弊社は小さな会社で、対応できる人間も時間も限られており冷やかしや同業他社の資料取りには対応しかね
ますので、実際の計画・予定などを書き添えていただけると助かります。 もちろんこちらから営業に伺うことはあり
ません・・営業マンもおりませんので。)
第一部 完
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※おことわり※
弊社は地元の小さな工務店ですので、試行錯誤しながら得たこれら
の技術やノウハウなどをフランチャイズのように展開するようなこと
は考えておりません。やってみたい方にはどなたにでも無料でご紹介
しておりますが、技術的権利を放棄するものではありません。
形だけを真似しても効果が現れないばかりか何らかのトラブルが発
生する可能性があります。開発中の技術でもあり100%を望まれて
も保証はしかねます。 もともと家とは工事が終わってそれで完成と
いうものではありません。 自動車をポンと買ってくるのとは違い、
人が住みながら快適なように育ててゆくものですので、それをご理解
いただける方にこそ利用していただきたいと思います。
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